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NoriyosiBlog

イカの行動生態を研究しているポスドクのブログです。 調査や研究のこぼれ話からポスドクの生き様などを紹介できればいいなぁ。

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墨を使った攻撃

そういえば学会中に論文がアクセプトされた。
内容はちょうど学会で発表したものだ。
イカが墨を使って餌を取るというトピックス的なネタである。

捕食者からの攻撃に対する防御手段としか知られていなかったイカ墨だが、
なんと餌取りにも応用して使うのだ。

一般受けしそうなネタだけに夢は広がり、
実験中は共同研究者とどういうタイトルにするかでたいそう盛り上がった。
私の考えたかっちょいいタイトルが
彼からダサいと一笑に付されたことは未だに根に持っているが、
イカ墨がかねてより煙幕、分身の術といわれていることや、
海外受けも踏まえて彼は「ニンジャアタック」というタイトルを提案してきた。
とても秀逸だと思い、完成の暁にはこれで投稿だと意気込んでいた。

が、現実はそううまくいかないもので、
この行動はそれほど頻繁に見られるものでは無かった。
イカ墨攻撃の有効性やどういう時にこれを使い、
どんな効果があるのかまでは残念ながら検証することは出来なかった。

本来ならばそれらすべてを明らかにしてから論文化するべきなのだろうが、
私も海外学振でヒメイカからしばらく離れることが決まっていたので、
とりあえず、俺たちが発見したぜという旗だけは立てておこうということで
不本意ながらも一度形にすることにしたわけだ。

学会での反応は良かったと思う。
特に若手研究者にはすこぶる受けが良かった。
アクセプト報告があと数日早ければ発表中に宣伝できたので、
それだけが少々残念ではある。

いつヒメイカに戻れるかは分からないが、
もっと詰めていけば、いずれはこの行動のメカニズムを明らかにできると思う。
そうすれば一般誌への掲載も夢ではないだろう。
その時こそ幻となった「ニンジャアタック」をタイトルに使おうと思う。
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フリーソフトなのに、すばらしいアフターサービス

親子判定に苦戦中だ。

これの解析にはいくつかあるのだが、
現在とりくんでいるのは、解析する子供の親候補が雄、雌ともに複数であり、
かつ親は1個体しかDNAを回収できていない状態の野外卵塊の父子判定

こっちとしては、その唯一DNAを回収した1個体の父性割合と
どれくらいスニーカーが関わっているかが知りたいわけだ。

で、一つ目のDNAを回収した個体の父性は
子供との遺伝子の共有の有無を確認することでなんとかなるのだが、
問題は、どのくらいのスニーカーが関わっているかについてだ。

これにはColonyというソフトウェアがいいとの情報から、
ここ最近はずっとこれに取り組んでいたのだが、これがなかなか上手くいかない。

DNA情報が分かっている親個体の情報も追加入力できるのだが、
バンドを共有していない個体と親子関係があるという結果が出るは
挙句の果てにはエラーが出て、結果のファイルを送ってくれなどと出る。
ただのエラー報告だろうけど、しょうがないから宛名も着けず、
表示されたアドレスにそのファイルを送った。

すると、次の日にColonyの開発者から
バグを直したので、新バージョンを送ってあげるとの丁寧な返事が。
これはチャンスと思い、結果のおかしな点について質問すると、
すぐさま的確なアドバイスが返ってきた。

解析の際に、良かれと思って少ない個体数(50個体ほど)だが、
野外個体群のアリル頻度のデータも追加情報として入力していたのだが、
どうも、これに出てきたアリルが子供にほとんど無かったのが解析ミスの原因だとのこと。
で今度はアリル頻度データ無しで再解析するとあっさりと解決。

いろいろと扱いが難しいところもあるソフトだけど
開発者はとても良い人だというのは重要なポイント。

おし!次だ、次。・・・と口ではかっこよく言えるのだけど。

エディターリジェクトを危惧していた、先日の投稿論文だが
メールでレビューにまわった事を通知してきた。
こういう展開ははじめて。アクセプトではないけど、
今回は即リジェを覚悟していたこともあり、こういう通知はとても嬉しい。

これで、しばらくの間は一安心。
その間に、今度はちょっと前に返ってきた論文の直しをして、再投稿しなくては。

ただね~。
毎度のことだけど、査読者のコメントに対応するのは面倒くさいのよね。
今回は数も少なく、要求もそんなに無茶なこと言っていないんだけど。

日齢査定

今年も一日中、輪紋を数える作業がはじまったよ!

久々に日齢査定するとやっぱり感覚が忘れているもので、
どのラインを読めばいいか思い出すまでそこそこ時間がかかった。

低倍率で綺麗に見えているラインも
高倍率になるといろんなラインが見えてくるから本当に厄介だ。
顕微鏡の焦点距離をちょっと変えるだけでラインが簡単に分裂する。

しかし、去年もすでに200個体近くカウントしているので、
今回はどのラインを見ればいいかすぐに定まった。
日齢査定に必要なのは経験というのは本当だと思う。

ピークの見方

森の分子生態学2 (種生物学研究)

遺伝マーカーを使った父子判定。
昔は電気泳動でバンドを読んでいたが、
今はApplied BioのDNA Analyzerのフラグメント解析を使っている。

バンドが波形となり、ピークを読むことでジェノタイピングするのだが、
この読み方がなかなか難しい。
ハリネズミのように何個も山が出来たり、ピークの高さにムラがあったり。
そんな判別しにくいプライマーなんか使わなければいいじゃないなんて思うかもしれないけど、
お金とか時間とか制約はいろいろあるものでねぇ。
これでなんとかしたい場合もあるんですよ。

で、このピークの見方は数年前に当時のポスドクの方に教えてもらって以来、
なんとなくでこれまでやってきたのだが、ちょっと前に出たこの本に
これが結構親切に解説されてあったのだ。

中でも、最も今の自分が欲しかった情報がセミヌルについて。
フラグメント解析では一般に、ヘテロの場合、
短いバンドの方がピークが高くなるとされていたが、
たまに、短いバンドの方でもピークが低くなってしまうことが見られて、
これの扱いをどうしようか悩んでいた。
どうやらこれはヌルアリルとまではいかないが増幅が上手くいかない
セミヌルアリルである可能性が高いとのこと。

なるほど、そういうわけか。
本ではできればそのようなバンドが出るプライマーを使わないのが一番だが、
どうしてもという時は、アニーリング温度を上げていっそのことヌルとして扱う、
逆に温度を下げて検出し易いようにするのも手だと教えてくれた。

実は単一の雌から生まれた子供のジェノタイピングをしたら、
一つのプライマーだけ、矛盾する結果。
つまり、片方のバンドは一つの雌由来なので、
多くとも二つのアリルはすべての子が共有しているはずなのに
複数のアリルが検出されてしまったのだ。
しかし、この情報を元にジェノタイピングをやり直すと
綺麗な結果が出てきたわけだ。

こういう時に親情報が分かっているバッチのジェノタイピングは
怪しいプライマーの有効性の検証に使えるのでいいということを知った。



この本は2が着いているので分かると思うが、当然1も存在している。

森の分子生態学―遺伝子が語る森林のすがた (種生物学研究 (第23号))

自分が持っていたのはこっちのほうだったが、
出版されたのはすでに10年以上も前。
発展著しい分子生物学の分野ではすでに使えない情報が多くなってきている。
もうしばらくすると、2の方もすでにあまり使わない手法だらけになってしまうのかもしれない。

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プロフィール

HN:
Norico
年齢:
44
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1980/08/19
自己紹介:
イカの行動生態学を研究しているポスドクです。

研究テーマは繁殖行動の進化・・・
ざっくり書くと、どんな雄がモテるのか、メスはどんな雄が好きなのかということを研究してます。

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