親子判定に四苦八苦している今日この頃。
これまでプライマーの開発はしたことがあるが、実際の親子判定をやったことがなかった自分は、プライマーさえ開発できたらあとは親のバンドとの一致を調べればいいものと高をくくっていたが、いざDNA判定に入ると話はそう簡単でないことに気付く。
A practical guide to methods of parentage analysis
上のレビューは様々な親子判定の手法やそれのためのソフトウェアをまとめたもので、今回これを見ながら魚の親子判定を行う学生と共に勉強中。そんなわけで復習がてらちょっとまとめてみる。
親子判定にもいろいろあり、水槽実験などで目的の親のDNAが回収できているときは最初に書いたように親のバンドと同じバンドを共有しない子供を除外していくことで目的の親がどれくらいの子供を獲得できているか調べることができる。これをExclusionと呼ぶ。
さらに最近ではソフトウェアの力を借りてより精度が高い親子判定を行うことが出来るようになった。除外できなかった個体は目的の個体だけでなく、その繁殖相手や別の個体の可能性も有しているが(バンドが被っている可能性があるから)、ここからさらに尤度や事後確立を使って候補を絞ることができる。これをParentage assignmentとか呼んだりする。よく使われるのはCERVUSというソフト。
で、問題は野外で採集した卵の親子判定を行う場合、つまり親のDNAが獲得できなかった場合である。この場合は子供の情報から親を推測する方法となる。やり易いのは卵塊などの親子判定である。何故ならメスは共通であることがほぼ確実であり、対立遺伝子の片割れが予測しやすいからだ。このように対象がfull-sib(両親が同じ兄弟)か、half-sib(異母、または異父兄弟)と思われる場合に親を予測する方法はparental reconstructionと呼ばれる。これを行うためにはGERUDというソフトがいいみたいだ。
問題は対象とする子供の親がまったく予測できないとき。うちの学生が直面したのは残念ながらこのケース。繁殖期に雄が縄張りを作り、そこに雌がやってきて産卵を行う魚なのだが、雌は複数やってきて産卵するので巣の中にある卵はどの雌のものなのかまったく分からない上に、スニーキングも頻繁に行われるので雄の情報もぐっちゃぐちゃ。このような面倒な場合でも対応してくれるソフトが開発されている。それがCOLONYというソフトでシミュレーションによって最もありそうな親の候補を導き出してくれるらしい。
そういうわけで、本日ようやくCOLONYで親子判定を行ったわけだが、さすがシミュレーション。学生のノートパソコン(OSはウィンドウズvista)では5時間経っても工程の10分の一くらいしか終わっていない。マシンパワーが相当必要とするみたいだ。
残念ながら結果を検討するまではまだ時間がかかりそうだが、ただ、パソコンを使っているっぽさは味わえてるので、ちょっと満足感はある。