なんて書くと、DNA実験経験者は首をかしげることだろう。
こいつはなんで、誰でも普通は当たり前にできることを
大発見でもしたかのように喜んでいるのだろうと。
しかし、私にとってはとても大きな成果だったのだ。
学生のときにDNA実験をやって、散々な目にあってきた。
失敗が多すぎると、どうしてもネガティブになってしまう。
そして結局、大きな成果もあげることもなく、
学生時代のDNA実験は終わってしまった。
DNA実験でリベンジしたいという思いと同時に強い劣等感が未だに心の中にある。
新しい研究室はフィールド調査が中心で、DNA実験の準備は一からのスタート
予算のこともあるので、キャンペーンで安く売られているよく分からないDNA抽出キットを買うしかなかった。
中身は冷凍保存用の酵素とバッファーだけで、
これまで使ってきたキットと比べても圧倒的に使用する薬品の量が少ない
こんなもので、ちゃんとDNAが抽出できるのかが最初の不安だった。
次の不安は実際キットを使用して、抽出を試みてみた時。
ほんの少しの組織しか使ってないのに、すべての組織が溶解しなかったのだ。
こうなると、失敗経験の豊富な私は不安でいっぱいだ。
購入したキットを間違えたのかもしれない。
高くてもよく使われるようなキットを選ぶべきだったか。
それとも、いっそのこと、キットなんかに頼らず、
薬品からすべてそろえ、基本的なマニュアル抽出から始めるべきだったか。
分光光度計にDNAの収量が表示された瞬間、すべての不安が吹き飛んだ。
まだまだ、親子判定で結果が出るには道のりはあるが
これは大いなる最初の一歩。