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NoriyosiBlog

イカの行動生態を研究しているポスドクのブログです。 調査や研究のこぼれ話からポスドクの生き様などを紹介できればいいなぁ。

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イカと麻酔

The Veligerという雑誌にヒメイカの麻酔についての論文が掲載された。
(Veligerはオンラインに力を入れていないので
ホームページからは最新の論文は読めないみたい。)

内容は氷温麻酔と2%エタノールとあともう一つの薬品(何かは忘れた)で
麻酔を行ったところ、エタノールは麻酔後すべてが回復したのに対し、
他の方法ではそこそこ死んでしまった。
また、氷温麻酔はインクを吐いて、ストレスがかかっているくさい
なので、エタノールを使って、胃の中の油球の観察を行いましたという内容だったかな。

んで、この論文を読んで、以前Animal Behaviourに投稿したことを思い出した。

Animal BehaviourはEthical Refereeというのがあるくらい、倫理面に厳しい。
まぁ、これは分野内では結構有名な話だ。
しかし、イカは無脊椎動物。
苦痛を感じるとされている脊椎動物ではサンプルを殺す場合、
必ず麻酔を行って苦痛を与えず、処理することが決められているが、
無脊椎動物はその範囲外だった。
(それでも、できるだけ苦痛を与えず処理するとは書かれていた気がする)

イカは水産物ということもあり、食材として見ている所がある。
なので、自分の周りの日本人では
サンプルを使った後、捨てたりしないで調理して食べることはあっても、
麻酔をかけてサンプルを処理する人はいなかった。

それでも、自分のイカは食用でもないし、
愛着もあったので、なんとなく昔からエタノールで麻酔をしてから固定を行っていた。

そういうこともあって、倫理面で厳しいと評判のこの雑誌に投稿した際も
無脊椎動物の処理に麻酔を使っているので文句はないだろうと思っていた。

しかし、Ethical Referee からはリジェクトの判断が下された。
(最も、リジェクトの主な理由は内容がスペシフィックすぎるというもので、
倫理面の問題はEditorの後押しをしたにすぎなかったが。)

当時はむしゃくしゃしていたので、さらっとしか読まなかったが、
冒頭の麻酔の論文を読んだのをきっかけに、改めてコメントを見返してみた。

自分はこのイカの性別、処女の有無を判定するための麻酔と、
固定の苦痛を和らげるための麻酔、二つの麻酔を行っているのだが、
ここに使い分けが無いことに一番の問題があったみたいだ。
(他にも問題はいろいろ指摘されていたのだが、多すぎて書きたくない)

要するに、最初の麻酔は回復させて行動を観察するのに使うため比較的軽めの麻酔であるが、
その軽めの麻酔を殺すための麻酔にも使っているのは苦痛を完全に取り除くためには不十分である。
ということだった。

言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。

もちろん、こっちはイカが麻酔がかかって、ほとんど動かなくなってから処理しているのだが
そこまで心を砕いていなかった。

Refereeは最後に、
頭足類は高度に発達した頭脳を持っており、
脊椎動物同様、苦痛を感じていると考えられる。
と書いていた。

頭足類の麻酔に関する論文は何本か出ており、
この問題にはそれなりに関心がもたれている。
このことは水産系の雑誌ではまったく問題にされなかったが、
動物学系の雑誌では今後、麻酔は必須となっていく流れかもしれない。

そして、覚えていなければいけないのは麻酔をしたかどうかではなく、
苦痛無く処理したかどうかが重要だということだ。
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プロフィール

HN:
Norico
年齢:
44
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1980/08/19
自己紹介:
イカの行動生態学を研究しているポスドクです。

研究テーマは繁殖行動の進化・・・
ざっくり書くと、どんな雄がモテるのか、メスはどんな雄が好きなのかということを研究してます。

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