そういえば学会中に論文がアクセプトされた。
内容はちょうど学会で発表したものだ。
イカが墨を使って餌を取るというトピックス的なネタである。
捕食者からの攻撃に対する防御手段としか知られていなかったイカ墨だが、
なんと餌取りにも応用して使うのだ。
一般受けしそうなネタだけに夢は広がり、
実験中は共同研究者とどういうタイトルにするかでたいそう盛り上がった。
私の考えたかっちょいいタイトルが
彼からダサいと一笑に付されたことは未だに根に持っているが、
イカ墨がかねてより煙幕、分身の術といわれていることや、
海外受けも踏まえて彼は「ニンジャアタック」というタイトルを提案してきた。
とても秀逸だと思い、完成の暁にはこれで投稿だと意気込んでいた。
が、現実はそううまくいかないもので、
この行動はそれほど頻繁に見られるものでは無かった。
イカ墨攻撃の有効性やどういう時にこれを使い、
どんな効果があるのかまでは残念ながら検証することは出来なかった。
本来ならばそれらすべてを明らかにしてから論文化するべきなのだろうが、
私も海外学振でヒメイカからしばらく離れることが決まっていたので、
とりあえず、俺たちが発見したぜという旗だけは立てておこうということで
不本意ながらも一度形にすることにしたわけだ。
学会での反応は良かったと思う。
特に若手研究者にはすこぶる受けが良かった。
アクセプト報告があと数日早ければ発表中に宣伝できたので、
それだけが少々残念ではある。
いつヒメイカに戻れるかは分からないが、
もっと詰めていけば、いずれはこの行動のメカニズムを明らかにできると思う。
そうすれば一般誌への掲載も夢ではないだろう。
その時こそ幻となった「ニンジャアタック」をタイトルに使おうと思う。
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