朝、研究室に行くとうちの釣りキチ学生が嬉しそうにある物を手渡してきた。

カミナリイカだ。
オスの体に出るリップマークがカミナリイカの証。
釣りキチいわく、今日の朝4時から釣っていたらしい。
雄4個体、雌1個体というすばらしい釣果。
「周りは誰も釣っていなかったんですけど、僕だけ釣れたんですよ。」
と聞いてもいないのに自慢気に語ってきた。
いつもだったらガン無視だが、実はいろんな種類のイカの精子を集めようと画策していたこともあり、
今日だけは「すごいねー」と相槌を打ってあげる現金な自分。
北海道、東北はコウイカを滅多に見ることはない。
なので、どんな種類がいるのかほとんど把握していないし、
体のつくりも良く分かっていないので、ここぞとばかりにじっくり観察した。
特に面白かったのが触腕のポケットだ。

写真の中央でだらりと垂れているのが触腕。変な穴から伸びているのが分かるだろうか?
普段弄っているヒメイカだけでなく、ヤリイカやスルメイカといったツツイカの仲間は
触腕は外部から見えているのだが、写真のようにコウイカの仲間は触腕を収めるポケットがあり
使わないときは収納しているのだ。
だから、ぱっと見ると、腕が8本しか見えない。
他にもいろいろ違うところは多かったのだが、個人的にここが一番ツボだったかな。
しかし、でかいイカは計測やら解剖が大変だ。
もちろん小さいヒメイカは顕微鏡を使わなければいけないところが多く、それはそれで大変なのだが、
なんといってもイカ臭がキツイし、ヌメヌメでペンは握りにくい。
ま、結局は慣れの問題なのだけれど。
無事、目的の精子も採取することが出来た。
お礼の意味も込めて、今回の功労者たる釣りキチ君をはじめ、
研究室の面々に、イカの精子が泳ぎまわる様を披露した。
スライドガラスの上を縦横無尽に泳ぎ回るイカの精子に、皆、感動してくれた。
こういうので素直に喜んでくれるのを見るのは、研究者として嬉しい瞬間だ。
最後は釣りキチ君に5杯のイカを捌いて貰って終了。
実験に使った個体を食べて終わるのが、イカのいいところ。
明日の昼が楽しみだ。
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