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NoriyosiBlog

イカの行動生態を研究しているポスドクのブログです。 調査や研究のこぼれ話からポスドクの生き様などを紹介できればいいなぁ。

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エロDVDと精子競争は関係あるのか

どっかに行きたいけど、イカちゃんのせいでどこにもいけないわけで。
・・・いや、イカの世話を言い訳に、結局どこにも行きたくないのをごまかしたのが正直なところかな。
シーズンが終わったら何処へでも行くさ。


Human sperm competition in postindustrial ecologies: sperm competition cues predict adult DVD sales

精子競争理論にのっとると、エロDVDのセールスは複数の男とヤッているのが上位に来るけど、男一人のハーレム状態の奴はあんまり売り上げが良くないですよ。というものすごい内容の論文がこともあろうにBehavioral Ecologyで出た。

アブストラクトを読んでもその意味が分かんなかったので、さっとイントロを読んだのだが、
若い子が出ているエロDVDを買うのは若さに欲情のスイッチが入るように、複数の男性と女性が性交しているDVDの方が、精子競争理論で言うと競争しなければいけないというスイッチが入るため、売り上げが良くなるのではという発想らしい。

こういう、アホな研究は嫌いじゃないが、内容には同意しかねるかな。快楽や興奮などは射精量やオルガズムに影響を与える、いわば精子競争への対応やCryptic Female Choice を発生させる至近要因として機能するだろうと自分も考えているので、そういうキューとしてのアプローチはどんどんやればいいと思うが、今回の発想は安易すぎる気がする。

そもそもエロDVDは女優が目当ての場合が多い。乱交ものは目当ての女優に焦点を当てているが、ハーレム的なものは一人の女優が写る時間は薄まってしまうので、ファンが購入するのは当然、前者になるはずだ。とても純粋に精子競争による興奮を反映した結果になったとは言いがたい。

というわけで一対一のものと乱交もので比較するのがいいと思うのだが。どうだろう。
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下ネタ好きそうに見えて、実は好き(やっぱりかい)

家に帰ると、出迎えてくれたのは助成金の不採択通知でした。

チックショー

それはさておき、論文でも紹介しようかな。
CDでジャケ買いってあるじゃない。
ジャケットのビジュアルを見て思わず買ってしまうっていうあれ。
今日の論文はタイトルを見て思わず読みたくなった論文だ。

The erect ‘penis’ is a flag of submission in a female-dominated society: greetings in Serengeti spotted hyenas.
雌優位の社会において、勃起したおちんちんは服従の白旗である:ハイエナの挨拶行動

そりゃ、思わず読んでしまうよ。

ハイエナは雌リーダーが頂点に立つ、母系社会を作る動物。
群れの中にはヒエラルキーがあり、
劣位の個体はランクが上の個体に積極的に挨拶をする。
この挨拶がお互いの性器を嗅いだり、舐めたりする行動で、
劣位の個体はその際に性器を勃起させるそうだ。

ここでいうおちんちんは雄だけではなく、雌にも当てはまる。
雌の性器は雄と同様の偽ペニスを持つ。
このような偽ペニスはハイエナだけでなく、いくつかのサルの仲間でも見られが、
ハイエナでは服従のシグナルとして、機能しているというわけ。

こういうタイトルに惹かれるのは自分だけかとも思ったけど、
被引用数も80以上あったので
そのうちの数人は同じセンス、簡単に言えば下ネタ好きだろう。

自分もタイトル読みさせちゃう、ナイスセンスのタイトルの論文を書きたいわぁ。

やめられない、とまらない。

今日のゼミで紹介した論文

Biting off more than you can chew: sexual selection on the free amino acid composition of the spermatophylax in decorated crickets


コオロギの仲間は交尾の時に、
雄が雌に精子の詰まった袋とゼリー物質の2つを受け渡す。
雌はまず、ゼリー物質を食べる。
ゼリーを食べている間、精子袋内の精子が雌の体内に移送、貯蔵される。

しかし、雌はたまにこのゼリー物質を食べるのをやめ、
おまけに、精子袋を捨ててしまう。
こうなったら、雄の精子はほとんど雌に受け取ってもらえず、
折角の交尾が無駄になってしまう。
つまり、雄はメスにゼリーを食べ続けさせることができなければ、
繁殖成功が下がってしまうわけだ。

著者らはこのゼリー物質の味が雌が食べ続けるか、
それとも途中で食べるのを止めてしまうか、の決め手になっているのではないかと考え、
雌が食べ続けたゼリーと、途中で捨てられてしまったゼリーの味(アミノ酸組成)を調べた。
すると、その結果は、少々複雑な解析を行っていたものの、
食べ続けるかどうかは味覚や食感の違いと関係していたのだった。

昆虫のいくつかの仲間では、
交尾してもらうために雌に雄がプレゼントを行うものがいる(婚姻贈呈)。
従来の研究では、その量や栄養が雌にとって直接的な利益になると言われてきた。
しかし、本研究のこのゼリーは栄養なんてほとんど無いらしい。
いわばスナック菓子みたいなもの
美味しいプレゼントを雌が選んでも、雌には生存上のプラスにはならない。
このため、この種における婚姻贈呈の進化は
雄が雌が好きな味覚に便乗し、美味しいゼリーを渡すことによって、
雌を操作するという経路を辿っていると考えられ、
これを"Candymaker hypothesis"というそうだ。

・・・しゃれた名前の仮説ですね。
要するにだ。料理が上手い男が勝ちってこと。


カメノテの新・受精方法

Something Darwin didn't know about barnacles: spermcast mating in a common stalked species

フジツボの仲間のカメノテの新しい受精方法のお話

フジツボの繁殖方法といえば、
めちゃめちゃ長いペニスを持っていて
隣の個体まで、それを伸ばして交尾を行うか、
自家受精を行うかのどちらかというのがこれまでの定説。

しかし、今回、交尾できない位置(周りの個体からペニスが届かない)にいる
個体がいろんな雄由来の受精卵を持っていたことがわかったそうな。

タイトルがハイセンス。
確か、ダーウィンは誰かに、
何か一種類でも精通した研究対象がないのは本物の生物学者ではないとか
言われて、フジツボ研究に没頭したとか。
そんな第一人者のダーウィンも知らないというタイトルは
なかなかににくいね。

*書いていてあまりにもあやふやだったので、ググったら植物学者のジョーゼフ・フッカーに、
「ひとつの種について熟知していないものは種の変遷を語る資格はない」と言われたそうな


ダイオウイカの巨大な目

日曜にはダイオウイカの番組がはじまるので、
今日はダイオウイカの論文でも紹介しましょかね。

A Unique Advantage for Giant Eyes in Giant Squid

ダイオウイカは直径30cmにもなる巨大な目を持っている。
同じサイズのメカジキやもっとでかいクジラなどの目はもっと小さく、
相対的に異常にでかい目ということらしい。

でかい目を作るのはコストになるのになんでこんな目をしているの?
っていうのを、深海での暗さ、目の大きさと視界の広さなどのモデルを
いろいろ使って、計算だけで検討してみた画期的な研究。

詳しい話は端折りますが
でかい目は餌(小さいターゲット)ではなく、
深海で捕食者のクジラ(巨大なターゲット)を見つけるのに
効果を発揮しそうだという結論。

でかい目は本当にコストなのか?とか、
クジラを見つけてもすぐに逃げられるのか?とか、
そもそもマッコウクジラの胃内容のほとんどはダイオウイカではなく、
他の外洋性イカなので、捕食圧がそれほど高いとは思えないとか、
いろいろ前提条件が無理矢理なので、
きれいな結果だけど、これが本当かどうかは正直微妙。

ただ、ダイオウイカの巨大な目に注目し、
そして計算だけでそれらしい結論にたどり着いた結果、
Current Biologyにのったのは賞賛に値するのではないだろうか。
 

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プロフィール

HN:
Norico
年齢:
44
HP:
性別:
非公開
誕生日:
1980/08/19
自己紹介:
イカの行動生態学を研究しているポスドクです。

研究テーマは繁殖行動の進化・・・
ざっくり書くと、どんな雄がモテるのか、メスはどんな雄が好きなのかということを研究してます。

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